ショート動画がバズっても売れない理由。再生数と売上をつなぐ設計
「動画は伸びたのに、売上は変わらなかった」。SNSに取り組んだ企業から、いちばん多く聞く話です。
再生数が伸びること自体は悪いことではありません。ただ、再生数と売上のあいだにはいくつも段差があって、そこを設計していないと、数字は動いても事業は動きません。この記事では、その段差がどこにあるのかを整理します。
再生数が売上に変わるまでの5段階
ショート動画から購入に至るまでには、おおよそ次の段階があります。
- ①見られる(再生される)
- ②最後まで見られる(視聴維持)
- ③発信者に興味を持つ(プロフィール遷移)
- ④信用する(他の投稿・サイトを見る)
- ⑤買う(購入・問い合わせ)
再生数が示しているのは①だけです。①だけが跳ねても、②以降が薄ければ売上には届きません。逆に、①がそこそこでも②〜⑤が繋がっていれば、売上は動きます。
「バズったのに売れない」は、①だけを目標にしてしまった結果として起きます。
よくある3つの断絶
断絶1:内容と商品が関係ない
再生数を取りにいくと、どうしても「誰でも見て面白いもの」に寄っていきます。ところが、誰でも見て面白い内容には、誰でも見に来ます。
商品と関係ない層が集まったアカウントは、フォロワーが多くても売れません。むしろ、その後の投稿の反応が読めなくなるぶん、運用が難しくなります。
見るべきは「誰に届いたか」です。再生の絶対数より、想定した層に届いているかどうかを先に確認してください。
断絶2:動画のなかで「何屋か」が分からない
視聴者は、動画を見終わったあとに何かをしようとは思っていません。よほど強い理由がないかぎり、そのままスクロールします。
プロフィールに飛んでもらうには、動画のなかで「この人は何をしている人なのか」が分かっている必要があります。ここが曖昧なまま「詳しくはプロフィールへ」と言っても、飛ぶ理由がありません。
断絶3:飛んだ先に受け皿がない
プロフィールまで来た人が、次に何を見るのか。ハイライト、固定投稿、リンク先のページ。ここが整っていないと、興味を持った人がそこで止まります。
動画の改善に時間をかける会社は多いのですが、受け皿の整備は後回しにされがちです。実際には、ここを直すほうが早く効くケースが少なくありません。
目的から逆算して設計する
順番を逆にすると、やることが決まります。
- 誰に買ってほしいのか
- その人はいま何に困っているのか
- どういう状態になれば「話を聞いてみよう」と思うか
- そう思ってもらうには何を見せる必要があるか
- それを届けるには、どんな動画を出せばいいか
この順で考えると、作るべき動画の内容はかなり絞られます。「とりあえず伸びそうなネタ」からは出てこない企画になりますが、そのぶん、来る人の質が変わります。
追うべき数字
再生数のかわりに見る数字は、段階ごとに用意しておくと分かりやすいです。
- ①見られたか → インプレッション、リーチ
- ②最後まで見られたか → 平均視聴維持率、視聴完了率
- ③興味を持たれたか → 保存率、プロフィール遷移率
- ④信用されたか → フォロー率、他投稿の閲覧
- ⑤買われたか → 指名検索数、サイト流入、問い合わせ数
どこで落ちているのかが分かれば、直す場所も決まります。全体をまとめて「伸びない」と判断してしまうと、打ち手が出てきません。
「保存されるか」が分かれ目になる
いいねは「見て良かった」という反応ですが、保存は「あとで必要になりそうだ」という判断です。購入につながる動画は、たいてい保存率が高くなります。
理由は単純で、保存される動画には具体的な情報が入っているからです。価格、使い方、選び方の基準、他との違い。こうした判断材料があると、人は手元に残そうとします。
逆に、面白いだけの動画は保存されません。その場で消費されて終わります。再生数は伸びるのに売上に届かない動画は、たいていここが薄い。
企画に迷ったときは、「この動画を保存する理由はあるか」を基準にしてみてください。答えが出ないなら、まだ企画が固まっていないということです。
業種によって、厚くすべき段階が違う
売上まで届かせるとき、5段階のどこに力を入れるべきかは業種によって変わります。
- 飲食・小売などの来店型:③〜④が要。場所、雰囲気、混み具合など「行く前に知りたいこと」を潰しておく
- ECや単価の低い商材:①〜②が要。認知の量がそのまま売上に効きやすい
- BtoBや高単価の商材:④が要。1本では決まらないので、信用を積む投稿を並行して出す
自社がどれに近いかで、1本の動画に持たせる役割は変わります。すべてを1本に詰め込む必要はありません。むしろ詰め込むほど、何も伝わらなくなります。
どれくらいの期間で判断するか
アカウントの立ち上げから、購入につながる導線ができるまでは、早くて3ヶ月、通常は半年程度を見ておくのが現実的です。
最初の1〜2ヶ月は、どの切り口が反応されるかを試す期間になります。ここで数字を記録していないと、あとから振り返れません。感覚だけで進めると、当たった理由が分からないまま次に進むことになります。
目安として、3ヶ月経っても②の視聴維持率がまったく動かない場合は、頻度や時間帯ではなく内容そのものを見直したほうがいいサインです。
まとめ
再生数は、入口の広さを示す数字にすぎません。
売上まで繋げたいなら、「誰に、何を思ってもらい、次に何をしてほしいか」を先に決めて、そこから動画の内容を決める順番になります。遠回りに見えますが、伸びた動画を売上に変換できないまま続けるほうが、結局は時間がかかります。