10〜30代に届くSNS設計。「探す」から「流れてくる」への前提の変化
10〜30代に商品を届けたいとき、いちばん最初にずれやすいのが「どうやって知ってもらうか」の前提です。
上の世代にとって、情報は「検索して探すもの」でした。いまの10〜30代にとっては、情報は「流れてくるもの」です。この違いは、施策の組み立てそのものを変えます。
探す情報から、流れてくる情報へ
検索は、探したいものが自分のなかにあるときに使う行為です。「新潟 カフェ」と打つ人は、すでにカフェに行きたいと思っています。
一方でSNSは、探していないものに出会う場所です。カフェに行こうと思っていなかった人が、たまたま流れてきた動画を見て行きたくなる。ここが決定的に違います。
つまり、SNSは需要が生まれる前に接触できる場所です。検索で待っているだけでは、その手前の需要そのものを取りこぼします。
「検索されない商品」ほどSNSが効く
検索されるということは、その商品カテゴリを知っているということです。逆にいえば、まだ知られていない商品や、言葉にしづらい商品は、そもそも検索されません。
新しいサービス、こだわりのある食品、地域の店。こうしたものは検索需要が小さく、SEOで待っていても人が来ません。しかし、映像で見せれば「これ良さそう」と思ってもらえる余地は十分あります。
SNSは、需要をつくる側の施策として機能します。
若い世代のなかでも、探し方は分かれている
「若い世代はSNSで検索する」とよく言われますが、実際には目的によって使い分けられています。ざっくり整理するとこうなります。
- 雰囲気を知りたい(店、旅行先、コスメ)→ InstagramやTikTokで検索
- リアルな評判を知りたい(サービスの良し悪し)→ X(旧Twitter)で検索
- 手順を知りたい(使い方、やり方)→ YouTubeで検索
- 事実を確認したい(住所、営業時間)→ Googleで検索
ここで重要なのは、SNSで検索する行動そのものが、SNS上に情報がある前提で成立しているということです。SNSに何も出していない会社は、検討の土俵に上がりません。
決め手になるのは、企業の発信より他人の投稿
もうひとつの特徴が、企業の公式発信より、第三者の投稿を信用するという点です。
広告は広告として認識されます。企業アカウントの投稿も、宣伝として割り引いて見られます。そのぶん、実際に使った人の投稿や、店員が普通に喋っている動画のほうが届きます。
この前提に立つと、施策の優先順位が変わります。整った広告を1本つくるより、語ってもらえる状態をつくるほうが効くことが多い。インフルエンサー施策やUGC(ユーザー投稿)を軸に置く理由はここにあります。
設計するときの順番
以上を踏まえると、10〜30代向けの設計はこうなります。
- そもそも検索される商品か、されない商品かを判断する
- 検索されないなら、SNSで需要をつくる前提で組む
- どのSNSで、どんな検索のされ方をするかを想定する
- 企業発信だけでなく、第三者が語れる素材を用意する
- SNSから来た人が納得できる受け皿(サイト・プロフィール)を整える
特に5番目は見落とされがちです。SNSで興味を持った人は、必ずどこかで裏を取ろうとします。そこで情報が薄いと、そこまでの努力が無駄になります。
なぜ「受け身」の情報取得が主流になったのか
この変化は、若い世代の性格の問題ではありません。情報の量が、人が処理できる量を超えたことによる合理的な適応です。
選択肢が10個なら比較できますが、1万個あると比較そのものが苦痛になります。そこで「自分に合いそうなものを勝手に見せてくれる」仕組みのほうが快適になる。SNSのおすすめ表示は、まさにそれを担っています。
つまり、探す手間を省きたいという需要に、プラットフォーム側が応えた結果です。この流れが逆行することは考えにくく、企業側は「見つけてもらう」前提で組み直す必要があります。
地方の商材ほど、この変化の影響が大きい
地方の商品や店舗は、検索需要そのものが小さいという構造的な不利があります。「新潟 ○○」で調べる人の総数には限りがあり、そこを取り合っても増えません。
一方でSNSは、地域に関係なく届きます。県外の人が動画を見て「わざわざ行ってみたい」と思う導線は、検索からは生まれにくい。ここが、地方の事業者にとってSNSの価値がとくに大きい理由です。
実際、地方の店で行列ができるようになった事例の多くは、地元の集客ではなく県外からの流入で起きています。
ありがちな失敗:若者向けに寄せすぎる
この話をすると、「もっと若者っぽい表現にしよう」という方向に進みがちですが、たいていうまくいきません。
流行の言葉や編集を真似ても、内側にいない人がやると違和感が出ます。そして違和感は、いちばん敏感に察知されます。
必要なのは表現を寄せることではなく、判断材料を先に出すことです。価格、実際の使用感、他との違い。これらが分かりやすく示されていれば、表現が落ち着いていても選ばれます。
むしろ、無理に若く見せようとしていないほうが信用されやすい、という場面のほうが多いくらいです。
まとめ
10〜30代に届けるということは、「探されるのを待つ」から「流れていく場所に置いておく」へ、前提を切り替えるということです。
必要なのは、若者向けに寄せた表現をすることではありません。その人たちが日常的に情報と出会う場所に、判断材料を置いておくことです。